【〜迷信・怪〜調査同好会】偽シナ保管庫:温泉旅館の怪〜月を仰いだ日/オープニング〜
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月明かりが障子にぼんやりと写り、灯りのない部屋を静かに照らした。
温泉旅館の一室、男は政争に敗れ身を隠すためそこに宿泊していた。
連れ立った女もおらず、同行した秘書も隣の部屋で寝息を立てているころだろう。
男は窓側の椅子に腰をおろし、考え深く俯いて煙草の煙を気だるく吐き出す。
煙の粒子は月光を受けて、その光の軌道を露わにさせる。
男が床に着き、睡魔に意識を落とそうとしていたときだった。
『ドンドンドンドン…』
男の頭の上から何かを叩くような音が響いた。
彼は何の音かと思い、聞こえた方向を見上げるが、物が落ちたような様子も無かった。
男は天井に鼠でも走ったのだろうと思い、再び瞼(まぶた)を閉じて浅い眠りに身を任せる。
だが、ようやく夢がはじまろうとした頃に。
『ドンドンドンドン…』
また同じほうから遮られたような音が響いてきた。
いったい何なんだ。
男は上半身を起こし、目やにのついた眼を擦って音源の方向に向き直る。
『ドンドンドンドン…』
「………!!」
物が落ちた音でも、天井を鼠が駆ける音でもなかった。
それは壁の向こう側から響いてきた音だ。
それも壁を叩くような…。
男は不審に思い、起き上がって肌蹴た浴衣を直すと部屋を出た。
隣の部屋で何が起こっている。
旅行に来た学生でも暴れているのだろうか。
兎に角このままでは眠れない、注意しなければ。
男は部屋の扉に鍵をかけると、音源の方向に向かって歩き出そうとした。
「え?」
第一歩を踏み出そうとしたその時、男は気付く。
その先には喫煙スペースがあるだけで、隣の部屋など無いことに。
男は背筋に冷たいものが走るのを感じ、引き返そうと翻した―が。
その振り向いた目の前に巨大な影が立ち塞がり、その次の瞬間には二度と覚める事のない眠りについていた。
「皆、集まったようだな。まずはこれを見て欲しい。」
拝は集まった能力者たちに一枚の用紙を差し出す。
どこかのホームページを印刷したものらしく、フォトには風情のある旅館が写されている。
【温泉旅館「月雲閣」】
フォトの下には、コースごとの食事内容や温泉成分などが宣伝口調で記されている。
「本題だが、この温泉旅館で宿泊客が一人姿を消したらしい。」
予報士の話では、果たして死人が絡んでいるようだ、と。
「ここの主人は死んだ父の友人でな、調査依頼は彼から寄せられたものだ。」
用紙に記載された住所を見ると、ここからはかなり離れた場所だ。
日帰りは難しいだろう。
「何、折角なので旅行も兼ねて行ってくればいいだろう。主人も全員宿泊費は受け取らんと言ってくれているしな。」
拝が窓を開け放ち、咥えた吸い物に火を燈すと煙を吐き出した。
「…混浴が無いのが残念だ。」
にこやかに笑う龍田飛の後ろ回し蹴りが拝の首筋を捉えた。
温泉旅館の一室、男は政争に敗れ身を隠すためそこに宿泊していた。
連れ立った女もおらず、同行した秘書も隣の部屋で寝息を立てているころだろう。
男は窓側の椅子に腰をおろし、考え深く俯いて煙草の煙を気だるく吐き出す。
煙の粒子は月光を受けて、その光の軌道を露わにさせる。
男が床に着き、睡魔に意識を落とそうとしていたときだった。
『ドンドンドンドン…』
男の頭の上から何かを叩くような音が響いた。
彼は何の音かと思い、聞こえた方向を見上げるが、物が落ちたような様子も無かった。
男は天井に鼠でも走ったのだろうと思い、再び瞼(まぶた)を閉じて浅い眠りに身を任せる。
だが、ようやく夢がはじまろうとした頃に。
『ドンドンドンドン…』
また同じほうから遮られたような音が響いてきた。
いったい何なんだ。
男は上半身を起こし、目やにのついた眼を擦って音源の方向に向き直る。
『ドンドンドンドン…』
「………!!」
物が落ちた音でも、天井を鼠が駆ける音でもなかった。
それは壁の向こう側から響いてきた音だ。
それも壁を叩くような…。
男は不審に思い、起き上がって肌蹴た浴衣を直すと部屋を出た。
隣の部屋で何が起こっている。
旅行に来た学生でも暴れているのだろうか。
兎に角このままでは眠れない、注意しなければ。
男は部屋の扉に鍵をかけると、音源の方向に向かって歩き出そうとした。
「え?」
第一歩を踏み出そうとしたその時、男は気付く。
その先には喫煙スペースがあるだけで、隣の部屋など無いことに。
男は背筋に冷たいものが走るのを感じ、引き返そうと翻した―が。
その振り向いた目の前に巨大な影が立ち塞がり、その次の瞬間には二度と覚める事のない眠りについていた。
「皆、集まったようだな。まずはこれを見て欲しい。」
拝は集まった能力者たちに一枚の用紙を差し出す。
どこかのホームページを印刷したものらしく、フォトには風情のある旅館が写されている。
【温泉旅館「月雲閣」】
フォトの下には、コースごとの食事内容や温泉成分などが宣伝口調で記されている。
「本題だが、この温泉旅館で宿泊客が一人姿を消したらしい。」
予報士の話では、果たして死人が絡んでいるようだ、と。
「ここの主人は死んだ父の友人でな、調査依頼は彼から寄せられたものだ。」
用紙に記載された住所を見ると、ここからはかなり離れた場所だ。
日帰りは難しいだろう。
「何、折角なので旅行も兼ねて行ってくればいいだろう。主人も全員宿泊費は受け取らんと言ってくれているしな。」
拝が窓を開け放ち、咥えた吸い物に火を燈すと煙を吐き出した。
「…混浴が無いのが残念だ。」
にこやかに笑う龍田飛の後ろ回し蹴りが拝の首筋を捉えた。